「マルタの騎士団」が発行、世界で最も珍しいパスポートとは

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マルタ騎士団が発行している世界で最も珍しいパスポート/Nicusor Floroaica/Sovereign Order of Malta
写真特集:マルタ騎士団の足跡をたどる

マルタ騎士団が発行している世界で最も珍しいパスポート/Nicusor Floroaica/Sovereign Order of Malta

(CNN) 「エルサレム、ロードス及びマルタにおける聖ヨハネ主権軍事病院騎士修道会(通称マルタ騎士団)」は、約1000年の歴史を持つカトリック騎士修道会であり、また約120カ国で難民キャンプや災害救援プログラムなどの活動を行っている人道支援組織でもあるが、それだけにとどまらない。

実は、国連オブザーバーの地位や独自の憲法を持つ主権国家でもある。しかし国土は有していない。車を走らせる道路はないが、車のナンバープレートを発行しており、さらに独自の切手、通貨、パスポートも発行している。

マルタ騎士団は、1099年ごろ、エルサレムで騎士修道会として発祥し、1530年にスペインの国王からマルタ諸島が与えられた。しかし、1798年のフランスの侵攻で、騎士団はナポレオン・ボナパルトによりマルタから追い出され、現在はローマに本部を置いている。

マルタに拠点を置く同騎士団のダニエル・デ・ペトリ・テスタフェラータ元首によると、現在、世界に散らばっている騎士、女性騎士、チャプレン(騎士団に仕える聖職者)は合わせて1万3500人で、そのうちマルタ諸島に住んでいるのはわずか100人ほどだという。

マルタ騎士団が最初のパスポートを発行したのは1300年代で、当時、騎士団の外交官らは、大使としての自分の役割を証明する文書を持って他国に渡った。

そして第2次世界大戦後に、この外交パスポートは他国で使用されているパスポートと同じ特徴を持つようになった。現在流通している外交パスポートは約500冊しかなく、世界で最も珍しいパスポートとなっている。

ごく限られた人にのみ発行

マルタ騎士団の深紅のパスポート(キリストの血にちなんでこの色にしたと思われる)は、主権評議会のメンバーと外交使節団のリーダー、そしてその家族らに対してのみ発行される。パスポートの表紙にはフランス語の組織名「Ordre Souverain Militaire de Malte」が金色の文字で書かれ、さらに騎士団の紋章が描かれている。

同騎士団のある幹部がタイのバンコクの空港に到着した時、パスポート審査官らは騎士団のパスポートを見たことがなかったようで、その珍しいパスポートを見ようと集まって来て、パスポートと一緒に写真を撮っていたという。

デ・ペトリ・テスタフェラータ元首によると、シェンゲン協定加盟国の3分の2がマルタ騎士団の外交パスポートを認めており、さらに騎士団は、フランス、英国、米国など、正式な外交関係のない多くの国々とも密接に連携しているという。

「我々は紛争や自然災害の犠牲者に対し、迅速に医療・人道支援物資を提供している。また病院、救急隊、医療センター、高齢者や障害者向けの施設、無料食堂、応急処置所なども運営している」とデ・ペトリ・テスタフェラータ氏は説明する。

マルタ騎士団の足跡をたどる

マルタを訪問中に騎士団に出くわす可能性は低いが、マルタ諸島には騎士団の奮闘や運命について学べる場所が多数存在する。

マルタ本島に到着して最初に目にするものの一つが、グランドハーバーにある巨大な要塞(ようさい)、聖アンジェロ砦(とりで)だ。この要塞は、かつて騎士団の本部だったこともあり、現在もマルタ島に残る、騎士団が部分的に所有する唯一の建造物だ。

グランドハーバーにある巨大な要塞、聖アンジェロ砦/robertharding/Alamy Stock Photo
グランドハーバーにある巨大な要塞、聖アンジェロ砦(とりで)/robertharding/Alamy Stock Photo

マルタの中世の首都で、ユネスコの世界遺産にも登録されているイムディーナの城壁の中では、「The Knights of Malta(マルタ騎士団)」と題した3Dのオーディオビジュアルショーを通じて、騎士団についてさらに学ぶことができる。

イムディーナを訪れたら「The Knights of Malta(マルタ騎士団)」と題した3Dオーディオビジュアルショーで騎士団についてさらに学ぶことができる/Finnbarr Webster/Getty Images
イムディーナを訪れたら「The Knights of Malta」で騎士団についてさらに学ぶことができる/Finnbarr Webster/Getty Images

またマルタ共和国の首都バレッタにあるマルタ国立図書館でも騎士団の足跡をたどれる。この図書館には、ローマ教皇パスカリス2世が騎士団に主権を授ける際に、教皇勅書として使用した羊皮紙が保管されている。

図書館から通りを隔てた向かいには、歴代の団長が公邸として使用していたグランドマスター(騎士団長)の宮殿がある。かつて騎士団が最高評議会のホールとして使用していた玉座の間には今もマルタ大包囲戦の様子を描いた古代のフレスコ画が飾られている。また大使の間に飾られている歴代団長の肖像画も見逃せない。

マルタ共和国の首都バレッタにあるグランドマスター(騎士団長)の宮殿/John Kellerman/Alamy Stock Photo
マルタ共和国の首都バレッタにあるグランドマスター(騎士団長)の宮殿/John Kellerman/Alamy Stock Photo

画家カラバッジョが騎士だった時代

著名なイタリア人画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラバッジョは、乱闘で男を殺害し、ローマを逃れた後、1607年にマルタにやってきた。マルタ騎士団の騎士に叙任され、宮廷画家になったが、その直後にけんか早く粗暴な性格が露呈し、騎士団から追放された。

グランドマスターの宮殿からわずか数ブロック先にある聖ヨハネ准司教座聖堂を訪れたら「洗礼者聖ヨハネの斬首」という絵に注目してほしい。これはカラバッジョが描いた最大の絵で、唯一知られている署名入りの作品だ。

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