遺体が横たわるエベレスト、それでも登頂を目指す理由とは

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エベレストの「ヒラリーステップ」を登る登山者=2021年、5月31日/Lakpa Sherpa/AFP/Getty Images

エベレストの「ヒラリーステップ」を登る登山者=2021年、5月31日/Lakpa Sherpa/AFP/Getty Images

(CNN) ぶ厚い雲が空を埋め尽くし、風速44メートル以上の凍てつく風が雪を運ぶ。零下34度という極寒の中、生命を脅かす吹雪や雪崩が頻発する。

これが世界最高峰を誇るエベレストの典型的な気象条件だ。

ヒマラヤ山脈にあり、ネパールとチベットにまたがるこの巨大な山は、標高8849メートルで、その頂上は空に浮かぶほとんどの雲より高い。

エベレスト登頂を試みるには、数カ月、時には数年にわたるトレーニングと体調管理が必要だが、それでも登頂できるとは限らない。事実、エベレストでは300人以上が亡くなっている。

それでも毎年春になると、この山には頂上を目指す何百人もの登山者がやってくる。ここでは、登頂に必要なこと、そして世界最高峰の登頂に成功した登山家のモチベーションを紹介する。

「自分の体調はかなりいいと思っていた」

外科医のジェイコブ・ウィーゼルさんは1年近く体調を整え、昨年5月にエベレスト登頂に成功した。

ウィーゼルさんは「私は約22キロのバックパックを背負い、昇降運動マシンを使った運動を何の問題もなく2時間行えたため、かなりいい状態だと思っていた。だが、自分の健康状態がこの山で要求される高い運動能力には見合っていないと知って謙虚になった」と語った。

ウィーゼルさんは「5歩歩いたら、30秒から1分かけて息を整えなければならなかった」とエベレスト登頂中の酸素不足との闘いを振り返った。

登頂を目指す登山者は通常、エベレストに到着すると、薄くなった酸素濃度に肺を適応させる。登山者はエベレストにある四つのキャンプのうちの一つ目に登り、そこで1~4日過ごしてから下山する。

この工程を少なくとも2回繰り返すことで、体が酸素濃度の低下に適応できるようになり、登山者の生存と登頂の可能性が高まる。

「もし誰かをエベレストの高所にあるキャンプに放り込んだら、10分から15分で昏睡(こんすい)状態に陥るだろう。そして、酸素濃度の低さに体が適応できず、1時間以内に死んでしまう」

ウィーゼルさんはキリマンジャロ(5895メートル)など何十もの山の登頂に成功しているが、どれもエベレストの高所とは比べものにならないという。

エベレストの最高高度で人間が生命を維持することはほぼ不可能であり、ほとんどの登山家は標高が7000メートル程度を超えると補助酸素を使用する。酸素不足は、登頂を試みる登山者にとって最大の脅威の一つであり、エベレストの「デスゾーン」に到達すると酸素濃度は40%未満にまで低下する。

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