米大統領選の結果覆す画策巡る裁判、トランプ氏による罪状認否のポイント

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トランプ氏が罪状認否で「無罪」と答弁する瞬間を描いた法廷画/Bill Hennessy

トランプ氏が罪状認否で「無罪」と答弁する瞬間を描いた法廷画/Bill Hennessy

(CNN) トランプ前米大統領は3日、ワシントンの連邦地裁に出廷し、 2020年大統領選の結果を覆そうとする運動に絡み起訴された刑事裁判で無罪を主張した。27分の手続きの中で、同氏の弁護側が取る戦略の一端が垣間見えた。

トランプ氏が刑事責任を問われて罪状認否を行うのは、今年で3回目。法廷にはジャック・スミス特別検察官の事務所に所属する弁護士のチームも初めて公に姿を見せた。今後検察側による訴追は、彼らが主導することになる。

以下に今回の審理でのポイントをまとめた。

裁判日程に絡む対立が浮上

スミス氏が同じくトランプ氏に対して6月に起こした機密文書に関する訴訟の中で、トランプ氏のチームは手続きの日程を遅らせようとしていた。選挙結果転覆についての最初の審理でも、同様の戦略を取る気配が感じられた。

3日の審理はおおむね落ち着いた雰囲気で、打ち合わせ通りに進んだ。判事の口調が鋭くなったのは検察に対し、推奨する公判期日と期間を7日以内に提出するよう促したときだった。判事はまたトランプ氏の弁護団に対しても、提出後7日以内に回答すべきとの見解を示した。

トランプ氏の弁護士を務めるジョン・ローロ氏は判事に対し、回答するには今後政府から受け取る証拠の量を確認する必要があると発言。それは「膨大な」ものになる可能性があると指摘した。

その上で、トランプ氏には公平かつ正当な裁判を受ける資格があると強調した。

検察側のトーマス・ウィンダム氏は、スミス特別検察官がこの裁判について、関連する法律に基づく通常のスケジュールで進めることを提案する考えだと示唆した。当該の法律は、刑事事件を裁判へと進める手続きに期限を設けている。 特定の免除を求めない限り、この期限が適用される。

タニヤ・チュトカン判事は8月28日に公判期日を決める意向だと、下級判事が3日に明かした。公判に先駆け、チュトカン氏には訴訟の取り下げや公判開始の日付、陪審に提示し得る証拠などを巡る議論の取りまとめが必要になる可能性もある。

トランプ氏は公判について、24年大統領選の後に行うべきだと主張するかもしれない。同氏の法務チームは機密文書に関する起訴の後でそう訴えていた。さらに同氏の弁護士らは裁判を行う都市の変更を試みてもいるようだった。彼らの主張によれば、ワシントンの陪審は政治的に偏向しており、トランプ氏に反対の立場をとる。

トランプ氏のカレンダーはさらに過密に

トランプ氏に対しては、今後も訴訟が発生する公算が大きい。

ジョージア州では向こう数週間のうちに、フルトン郡のファニ・ウィリス地方検事が同州の選挙結果を覆そうとした動きを巡る捜査で訴追に持ち込むとみられる。トランプ氏がこの件で起訴される可能性もある。

スミス氏が起訴した機密文書の不適切な取り扱いの問題については、現時点で来年5月に公判が開かれる予定。それに先駆けた公判前手続き(トランプ氏は出廷を義務付けられていない)も、通常通り行われるとみられる。口止め料の支払いに絡むビジネス詐欺の公判は、今のところ来年3月に予定されている。

トランプ氏はこの他、元コラムニストの起こした名誉毀損(きそん)訴訟など多くの民事訴訟も抱える。これらの裁判日程に、24年大統領選のスケジュールが加わる。例えば共和党候補者らによる最初の討論会は8月23日に開催される。

トランプ氏は公判前の手続きのための出廷を義務付けられていないが、選挙結果転覆を巡る訴訟では演出上の戦略から出廷しようとするかもしれない。3日の審理後、同氏は空港の滑走路で、訴追は政治的なものだと短く語った。また法律上の問題が深刻化するたび寄付金の調達を進めるのも、同氏のいつもの行動だ。

主要な検事が公式デビュー

3日は選挙結果転覆の起訴を担当するスミス氏のチームが初めて公式の場に登場する機会となった。

スミス氏自身も審理に出席した。これは機密文書を巡る訴訟での最初の審理と同様だった。今回の審理開始を待つ間、法廷ではスミス氏とトランプ氏が時折互いの方向へ視線を向けていたが、相手を見る回数はトランプ氏よりもスミス氏の方が多かった。

メリーランド州連邦検察から移った前出のウィンダム氏は、今回の選挙結果転覆を巡る捜査で中心的な役割を果たす。このほか検事の席にはワシントン(コロンビア特別区)連邦検察出身のモリ―・ガストン氏の姿もあった。同氏のいた部署は、司法省にとって最も政治的に機微な部類の事案を扱っている。

ガストン氏は昨年、トランプ氏の顧問のスティーブ・バノン氏に対する議会侮辱罪の裁判で首席検事を務めた。またトランプ氏の元選対陣営幹部2人の訴追にも携わっている。

新たなトランプ氏の弁護士に脚光

3日の審理では前出のローロ氏とトッド・ブランチ氏がトランプ氏の弁護士を務めた。ローロ氏は比較的最近トランプ氏の法務チームに加わり、現在は20年大統領選に関連する問題を担当している。

一方ブランチ氏は、機密文書や口止め料のビジネス詐欺の訴訟にも携わっている。

ローロ氏は3日の審理で、弁護側の弁論を行った。最近はCNNをはじめとするメディアにも頻繁に登場するなど、トランプ氏側の有力な弁護士として世間に認知されつつある。今回の弁論では被告を弁護する具体的な内容には踏み込まなかったものの、熱意のこもった主張を展開。公判の日程を確定する前に、トランプ氏の弁護団としてはより多くの時間が必要になる可能性を訴えた。

議事堂襲撃を象徴する裁判所に初出廷

今回トランプ氏が罪状認否を行った裁判所では、21年1月6日に発生した連邦議会議事堂襲撃事件に関する裁判が繰り返し開かれてきた。襲撃発生には、トランプ氏による選挙にまつわる虚偽の発言が関係している。

襲撃から2年半、事件の責任を問われ当該の裁判所で裁判を受けたトランプ氏の支持者は1000人を超える。

首都警察や議会警察の警官らも頻繁にこの裁判所を訪れ、自身が受けた身体的、心的外傷について証言を行ってきた。被告やその家族は、答弁の中でトランプ氏に言及した。

トランプ氏の弁護団は、ワシントンの政治的な傾向を理由に選挙結果転覆の裁判を別の裁判所で行うべきだと主張する。しかしこの裁判所ではトランプ氏の支持者数百人が議事堂襲撃事件で公平な裁判を受け、無罪判決が出たケースも複数ある。

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