ANALYSIS

兵器備蓄と非対称戦争 台湾は米国の協力で中国の侵攻を阻止できるか

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中国、台湾周辺で大規模軍事演習

台湾・台北(CNN) 中国からの牽制(けんせい)をよそに、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統は今月、訪問先の米カリフォルニア州で、ケビン・マッカーシー米下院議長と会談した。それに対する中国政府の積極的な軍事的対応は世界を揺るがせた。

これにより、共産主義の中国が民主主義の隣国を侵略しようと準備を進めているのではとの不安がますます高まった。中国人民解放軍は3日間にわたる軍事演習で空母1隻と艦艇12隻を派遣して台湾を包囲したほか、戦闘機100機超が台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入して台湾封鎖の模擬訓練を行った。

これまで一度も支配したことのない台湾を自国領土の一部だと主張する中国共産党は、今回の軍事演習を「台湾分離派勢力に対して厳重な警告」を鳴らす「統合精密攻撃」だと位置づけた。

そうしたメッセージは台湾政府にも明白だったようだ。台湾の呉釗燮(ウーチャオシエ)外交部長(外相)はCNNに、「中国は台湾に戦争を仕掛ける準備を進めている」ようだと語った。

こうした単刀直入な分析をきっかけに、一部からは懐疑的な声が持ち上がることになりそうだ。果たして台湾軍は、そうした状況に十分な備えができているのだろうかと。

台湾政府は先ごろ、公然と、兵役義務期間をこれまでの4カ月から1年に延長すると発表し、戦闘態勢の強化に向けて台湾製兵器の開発計画を加速させた。

だが専門家は、最近発表された、おそらく国際メディアではそれほど注目を集めていない、台湾と米国との協議が状況を変える可能性があるとみている。有事に備えて、台湾領内に武器弾薬を蓄える「有事備蓄」の計画だ。

当時メディアでは広く取り上げられなかったが、台湾の邱国正(チウクオチョン)国防部長(国防相)は3月に立法院(国会)で、台湾に戦時用の備品を蓄える案を米国と協議していると発言した。これを可能にしたのは、米国のバイデン大統領が昨年12月に署名した2023年国防権限法(NDAA)の条項だ。

台湾は長らく米国から武器を購入しているが、軍事専門家によれば、こうした備蓄は台湾防衛に重要な役割を果たすかもしれない。先ごろの中国による台湾封鎖の模擬訓練でも明らかになったように、戦争となれば、台湾への追加の武器供与は困難を極める可能性もあるからだ。

ウクライナと違い、台湾は周囲を海に囲まれているため、武器供与は空路か海路のみとなる。いずれの運搬方法も、中国軍による迎撃に極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。

したがって台湾にとって紛争が起きる前に弾薬を備蓄しておくことが不可欠だと語るのは、17~19年に台湾軍参謀総長を務めた李喜明氏(退役大将)だ。

「台湾にとって、戦時に備えて備蓄しておくことは重要かつ大きな意味を持つ」と李氏。「たとえ米国が直接軍事介入を望まなくても、このような備蓄があれば防衛に十分効果を発揮できる」

台湾はウクライナの戦争でも、米国の武器供与が遅れたことに再三懸念を表明してきた。蔡総統との会談を終えたマッカーシー議長は、「本日の会談で必要な措置がいくつか明らかになった。米国は台湾への武器販売を継続し、予定通りに台湾に到着するようにしなければならない」とツィートした。

非対称戦争

備蓄案をめぐる協議で問題になるのが、具体的にどんな武器が台湾の防衛に必要かという点だ。

台湾は数十年来、米国から戦闘機やミサイルを購入してきた。米国は台湾と「公式な」国交は結んでいないものの、台湾の安全を保証する最大かつ唯一の国であることは今後も変わらない。

バイデン政権が台湾への6億1900万ドル(約830億円)相当の武器売却について承認したと先月報じられた。これら武器にはF16戦闘機用のミサイル数百発も含まれる。

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