米港湾の中国製クレーンに通信装置、スパイ活動懸念 米議会調査

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「上海振華重工」(ZPMC)のクレーン=2019年1月/L. Todd Spencer/The Virginian-Pilot/Getty Images

「上海振華重工」(ZPMC)のクレーン=2019年1月/L. Todd Spencer/The Virginian-Pilot/Getty Images

(CNN) 米連邦議会下院の国土安全保障委員会などは10日までに、米国内の港湾に導入されている中国製の荷役クレーンの一部に用途が把握できない通信装置が見つかったとの新たな調査結果を明らかにした。

これらのクレーンが監視や妨害工作用に用いられる可能性があるとの懸念をかき立てる調査内容となっている。

同委と下院の中国問題を扱う特別委員会による今回調査は、米港湾と関連施設で使われている200基以上の中国製クレーンに焦点を当てていた。安全保障問題に関して米中間で強まる攻防と、米沿岸警備隊が先月、港湾当局に中国製クレーンの安全利用の向上に注意を促したことが背景にあった。

両委の調査結果によると、米港湾で使われている中国製クレーンに遠隔通信が可能なセルラーモデムが搭載されていることが判明した。今回の調査内容に通じる米議会筋はCNNの取材に、これらクレーンの製造元である中国企業「上海振華重工」(ZPMC)と米港湾当局が交わした契約文書の全てにこの装置に関する言及はなかったことを明かした。

米港湾当局者の1人が中国に赴いて、クレーンを調べた際、モデムは既に据え付けられていたとも指摘。米議会筋はモデムが見つかったZPMC製のクレーンは1基以上とも証言した。

米沿岸警備隊によると、米港湾で稼働中のクレーンの約8割が中国製。クレーンは時には遠隔操作が可能で、通信を経由した動作作業に通じるハッカーが米港湾での情報収集を進め、施設の運用などで妨害工作を仕掛けることも理論的には可能となっている。

米沿岸警備隊のサイバー対策部門の責任者は先月、中国製クレーンの調査で「設計上での脆弱性(ぜいじゃくせい)などを見つけた」と米議員に説明していた。

バイデン政権は先月、200億ドル(約2兆9400億円)を投じて新たな港湾インフラを整備する計画を発表。これらのインフラが「米国製」になることを強調し、クレーンも安全保障上のリスクが少ない国産品にするなどとしていた。

下院の国土安全保障委員会のグリーン委員長(共和党)はCNNへの声明で、委員会の調査により米国の港にあるクレーンの弱点が突き止められたと断じた。「中国共産党にスパイ活動を通じて貿易上の競争相手の力をそぐだけでなく、サプライチェーン(供給網)の妨害なども許すことになる」と警告。根本的な変革に即座に動かなければ、「世界的な支配を求める中国共産党に、我々の重要なインフラ基盤に侵入できるたやすい方途を与え続けることになる」と続けた。

一方、ZPMCは自社のサイトに載せた声明で、当該国の法規や規定を常に厳格に順守していると述べた。在ワシントンの中国大使館の報道担当者はCNNの取材に、中国製クレーンが安全保障上のリスクになるとの主張は「完全な被害妄想」と反論した。

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