急激に少子化進む韓国 軍も兵士確保に苦心

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
上陸の演習後、内陸部に銃を向ける韓国軍海兵隊/Brad Lendon/CNN

上陸の演習後、内陸部に銃を向ける韓国軍海兵隊/Brad Lendon/CNN

それでも軍隊は不可欠

しかし、元韓国陸軍中将のチョン・インボム氏は、技術さえ導入すれば問題がすべて解決するわけではないと指摘する。

例えば、領土を奪取して保持するには人手が必要だ。また戦場でAIシステムを運用・監督するのにも十分な訓練と教育を受けた人材が必要になる。

では、小規模化する軍隊からより多くの力を引き出すにはどうすればいいか。

チョン氏は、まず徴兵制度と予備兵を活用すべきだと言う。

「わが国が抱える多くの予備兵を活用できるようにするために、動員システムを見直す必要がある」とチョン氏は指摘する。

韓国の男性は、18~21カ月間の義務兵役を終えると、その後8年間は予備役となる。この間、彼らは自分の立場や任務を忘れないよう、年に1度招集され、訓練を受ける。その後も40歳まで、毎年、民防衛軍の訓練への参加が義務付けられている。この制度により、韓国は現在310万人の予備兵を抱えている。

予備兵は通常、毎年2泊3日の訓練への参加が義務付けられているが、現在、試験的に行われている制度では、選抜された予備兵たちが、技能を強化するために年間180日間の訓練を受けている。

また専門職の幹部(士官、准尉、下士官)の増員も一つの方法だ。22年の白書によると、この幹部たちは全員志願兵で、通常よりも長く兵役に服し、その間に高度な武器の操作を習得することにより、常備軍が縮小しても軍の戦闘能力の低下を防ぐという。

韓国国防省によると、韓国軍の総兵力に占める幹部の割合は17年の31.6%から22年には40.2%まで増加し、さらに27年までに40.5%まで増やす計画だという。

採用難

しかし、この計画には一つ問題がある。それは、国民が乗り気ではないことだ。

韓国国防省のデータによると、士官志願者は年々減っており、18年の約3万人から22年には1万9000人まで減少したという。

祥明大学のチェ教授は、「軍は、10年後、20年後に優れた将校団の一員となる有能な専門幹部候補生の確保に苦心している」とした上で、志願者数の減少の主な原因として、幹部になっても十分な金銭的、社会的利益が得られない点を挙げた。

では徴兵制のある軍隊でも、女性を活用してはどうか。

イスラエルも徴兵制を採用しているが、非営利組織のユダヤ人女性アーカイブ(JWA)によると、徴兵された兵士の4割は女性だという。また志願制の米軍とカナダ軍でも、軍隊の16%以上が女性だ。

韓国でも女性を徴兵すれば、軍の人材難の問題は解決するだろうが、韓国の伝統的な家父長制社会では障害が多すぎるとチェ教授は指摘する。また、仮にそれらの障害を乗り越えられたとしても、膨大な費用が掛かる恐れがある。

チェ教授は「(女性の徴兵には)社会的費用や女性の出産など、多様かつ複雑な要因が存在するため、コストが実利を大幅に上回ってしまうのではないか」と懸念を示す。

しかしチョン氏は、魅力的な報酬を提示すれば女性志願者を集めることも可能と見ている。

「女性兵士の月給が2000ドル(約30万円)なら、それは立派な仕事だ。女性は、月給2000ドルなら入隊したいと言うだろう。他国で兵士になっても月給は1500ドル程度だろう」(チョン氏)

韓国国防省も、女性の入隊者を増やすことも一つの考えとしているが、具体的な予定があるわけではない。

しかし、韓国には十分な時間は残されていないかもしれない。

韓国統計庁は先ごろ、過去最低水準にある出生率が今後2年間にさらに低下する見通しで、25年には合計特殊出生率が0.65まで低下する見込みだと発表した。

「CNNが見たアジア」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]